裂き織り入門 古布に新たな命を
日々の中で、ふと手仕事が恋しくなる瞬間はありませんか。スマートフォンやパソコンから少し離れて、温かみのある素材に触れ、集中して何かを作り出す時間は、心を穏やかにしてくれます。今回ご紹介するのは、古くなった布に新たな命を吹き込む「裂き織り」です。
裂き織りとは
裂き織りは、古着や端切れなど、役目を終えた布を細く裂いて緯糸(よこいと)とし、経糸(たていと)に通して織り上げていく伝統的な技法です。江戸時代には、布が貴重品だったため、布を無駄なく使い切るために生活の中で生まれました。現代では、エコな観点からも注目されていますが、何よりもその過程で生まれる独特の風合いや、手仕事の温かさが大きな魅力となっています。
マットやコースターのような小さなものから、バッグやタピストリーまで、アイデア次第で様々なものを作ることができます。使い慣れた布や思い出の布を使うことで、一層愛着の湧く作品が生まれるでしょう。
裂き織りの魅力
裂き織りの一番の魅力は、身近にある「古布」を活用できる点です。着られなくなった洋服や、使い古したタオル、シーツなどが、裂いて織り直すことで全く新しいものとして生まれ変わります。物を大切にする心にも繋がりますし、個性的な色や柄の組み合わせを楽しむことができます。
また、布を裂く、織り機に経糸を張る、緯糸を織り込む、という一連の作業は、繰り返しのリズムが心地よく、自然と集中力を高めてくれます。布の手触りや、織り進めるごとに生まれる模様の変化を感じながら手を動かす時間は、日々の忙しさを忘れさせてくれるでしょう。デジタルデバイスから離れて、じっくりと布と向き合うことで、心身のリフレッシュにも繋がります。
裂き織りを始めるために必要なもの
裂き織りを始めるのに、特別な道具は必ずしも必要ではありません。手軽に始められる卓上織り機などを使えば、自宅のテーブルの上で楽しむことができます。
- 裂き布: 古着、シーツ、タオル、着物など、不要になった布を使います。木綿や麻など、あまり伸び縮みしない素材が扱いやすいでしょう。
- 織り機: 初心者向けには、卓上織り機や小型の手織り機がおすすめです。様々なサイズや種類がありますので、作りたいものに合わせて選びます。本格的に始めたい場合は、少し大きめの織り機もあります。
- 経糸(たていと): 織物の土台となる糸です。丈夫で引っ張りに強い木綿糸や麻糸などが適しています。織り機の種類によって推奨される糸が異なります。
- はさみ: 布を裂くために使います。
- とじ針: 織り終わった糸の端を処理するために使います。
- 物差しや定規: 裂き布の幅を均一にする目安に使います。
最近では、裂き布と織り機、経糸などがセットになった初心者向けのキットも販売されています。まずはそういったキットから始めてみるのも良いでしょう。
裂き織りの基本的な始め方
小さなコースターなどを例に、基本的な流れをご紹介します。
- 布を裂く: 用意した古布を、はさみで切り込みを入れてから手で裂きます。布の素材によって裂きやすさが異なりますが、だいたい1〜2cm幅に揃えると織りやすいでしょう。様々な色や柄の布を裂いて、緯糸をたくさん用意しておくと、織る際に色の組み合わせを選べて楽しくなります。まるで色とりどりの糸を集めるような作業です。
- 経糸を張る: 織り機の取扱説明書に従って、経糸を均一な間隔でしっかりと張ります。この経糸が、織物の縦の線となります。
- 緯糸を織り込む: 裂いた布(緯糸)を経糸に交互に通していきます。シャトルと呼ばれる道具を使うと通しやすくなります。一段織り終えるごとに、目の詰まり具合を見ながら、へらのような道具で軽く押さえていきます。
- 織り進める: 緯糸の色や太さを変えながら、作りたいものの大きさに織り進めます。ここで布の色合わせを工夫するのが裂き織りの醍醐味です。
- 織り終わりと端の処理: 目標の長さまで織ったら、織り機から外し、織り始めと織り終わりの糸端をしっかりと処理します。経糸を結んだり、とじ針で布の中に織り込んだりする方法があります。
最初は少し難しく感じるかもしれませんが、簡単な織り方から始め、慣れてくると様々な模様や技法に挑戦できるようになります。ゆっくりと、ご自分のペースで進めていくことが大切です。
続けるコツと楽しみ方
裂き織りは、一度道具を揃えれば、自宅でいつでも手軽に楽しむことができます。裂き布は身近な古布を活用できますし、材料費も抑えられます。
飽きずに続けるコツとしては、まず小さなものから作ってみることです。コースターや鍋敷きなど、すぐに完成が見えるものから始めると達成感を得やすく、次の作品への意欲に繋がります。
慣れてきたら、布の裂き方を変えて太さを調整したり、異素材の布を組み合わせたり、経糸の色を変えたりと、様々な工夫で表現の幅を広げることができます。
地域によっては、裂き織りを教えてくれる教室やワークショップが開催されている場合もあります。そういった場所に参加してみるのも、新しい発見があったり、同じ趣味を持つ方と交流したりする良い機会になるでしょう。
まとめ
古くなった布に新たな命を吹き込む裂き織りは、環境にも優しく、心穏やかな時間を過ごせる素晴らしい手仕事です。布を裂く、織り進めるというシンプルな作業の中に、色合わせの楽しさや、物が形になっていく喜びが詰まっています。
デジタルから少し離れて、温かい布の手触りを感じながら、じっくりと裂き織りに取り組んでみてはいかがでしょうか。きっと、日々の暮らしに彩りと、心満たされるひとときをもたらしてくれるはずです。
手間ひま時間ガイドでは、これからも様々なアナログな趣味やアクティビティをご紹介していきます。ぜひ他の記事も参考に、ご自身に合った「手間ひま時間」を見つけてみてください。