手間ひま時間ガイド

写仏入門 心を穏やかに写仏を始める

Tags: 写仏, アナログ趣味, 手仕事, 心のゆとり, 写経

はじめに

日々の暮らしの中で、スマートフォンやパソコンに向かう時間が増え、気づけば心がざわついていることはありませんか。そんな時、静かに自分と向き合う時間を持つことは、心のゆとりを取り戻すための大切な一歩となります。

今回ご紹介するのは「写仏(しゃぶつ)」です。写仏とは、仏様のお姿を下絵の上から筆やペンでなぞり、描くこと。写経と同様に、無心になって筆を運ぶ時間は、慌ただしい日常から離れ、心穏やかな時間をもたらしてくれます。絵を描くことに自信がないという方でも、下絵を使うため気軽に始めることができます。

写仏とは

写仏は、古くから仏教の修行の一つとして行われてきました。仏様の姿を正確に写し取ることを通じて、集中力を高め、心を落ち着かせ、仏様の功徳を得ることを目的とします。近年では、信仰の対象としてだけでなく、心を整えるための趣味やメディテーション(瞑想)の一つとしても注目されています。

静かに墨をすり、筆を手に取り、ただひたすらに目の前の仏様のお姿を写し取る。この一連の動作に集中することで、自然と呼吸が整い、心のざわつきが静まっていくのを感じられるでしょう。デジタル機器から離れ、アナログな手作業に没頭する時間は、脳を休ませ、リフレッシュさせてくれます。

写仏を始めるために必要なもの

写仏は、特別な道具を揃えなくても、比較的気軽に始めることができます。まず揃えたい基本的なものをご紹介します。

これらの道具は、セットとして販売されているものもあり、初めての方には便利です。まずは手軽な筆ペンと写仏用紙から始めて、写仏の時間を体験してみるのも良いでしょう。

写仏の基本的な始め方・手順

写仏は決まった作法があるわけではありませんが、心を込めて行うための基本的な手順をご紹介します。

  1. 準備: 静かで落ち着ける場所を選び、机の上に写仏用紙を広げます。必要であれば、下絵の上に写仏用紙を重ね、文鎮でずれないように固定します。筆や墨汁(または筆ペン)を用意します。
  2. 姿勢を整える: 背筋を伸ばし、椅子に座るか正座して、落ち着いた姿勢をとります。楽な呼吸を心がけましょう。合掌したり、軽く目を閉じ、心を鎮める時間を設けても良いでしょう。
  3. 写し始める: 筆に墨を含ませ、ゆっくりと線をなぞり始めます。呼吸を整えながら、一画一画、丁寧に筆を進めます。仏様のお姿全体を把握しながら、どこから始めても構いません。外側の輪郭から描き始める方や、顔の中心から描き始める方など様々です。
  4. 無心で写す: 書き進めるうちに、余計な考えが頭に浮かんでくることもあるかもしれません。しかし、それに囚われず、ただ目の前の線に集中するように心がけます。線をなぞる感触、墨の色や香り、静かな時間に意識を向けます。
  5. 仕上げ: 全ての線を写し終えたら完成です。描き終わった仏様のお姿を眺め、達成感を味わいます。感謝の気持ちを込めて、合掌するのも良いでしょう。日付や名前を書く欄があれば記入します。

一つの写仏を完成させるのにかかる時間は、用紙の大きさや描き込み具合、個人のペースによって異なりますが、短いものでは30分から1時間程度、丁寧に行えば数時間かかるものもあります。一度に全て完成させようとせず、短い時間でも毎日少しずつ進めることもできます。

写仏から得られるもの

写仏は単に仏様の絵を写すだけでなく、様々な良い影響をもたらしてくれます。

デジタル機器から離れて、自分の手だけを使って何かを完成させる喜びは格別です。完成した写仏は、額に入れて飾ったり、大切に保管したりすることができます。寺院によっては、写仏を奉納することも可能です。

続けるコツと発展性

写仏を長く続けるためには、無理なく自分のペースで行うことが大切です。毎日少しずつ時間を取る、決まった曜日に写仏の日を設けるなど、習慣にする工夫をしてみましょう。

慣れてきたら、使う筆の種類を変えてみたり、墨の濃淡を調整してみたりと、表現の幅を広げることもできます。また、下絵なしで自力で仏様を描く上級者向けの写仏もありますが、まずは下絵を丁寧に写すことから始めるのが良いでしょう。

地域によっては、写仏の教室や体験会を開催している寺院や文化センターもあります。一人で行うのも良いですが、同じ趣味を持つ仲間と一緒に写仏をする時間も、また違った楽しさや学びがあるかもしれません。

まとめ

スマートフォンやパソコンの画面を眺める時間が多い現代において、写仏は、心と体を休ませ、自分自身と向き合うための素晴らしいアナログな時間を提供してくれます。

静かに筆を運び、仏様のお姿を写し取るひととき。それは、忙しさを忘れ、心穏やかになるための大切な「手間ひま時間」です。手軽に始められますので、ぜひ一度、写仏の世界に触れてみてはいかがでしょうか。