手軽なペン字入門 心穏やかに文字を書く
デジタルから離れて、文字を手書きする時間
日々の生活で、私たちはたくさんの文字を読み書きしています。しかし、そのほとんどがパソコンやスマートフォンの画面上でのことかもしれません。キーボード入力やフリック入力は便利ですが、自分の手でペンを握り、紙に文字を書く機会は、以前に比べてずっと少なくなったように感じられます。
知らず知らずのうちにデジタル疲れを感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな時こそ、スマホをそっと置いて、アナログな活動に目を向けてみませんか。手先を使い、ひとつのことに集中する時間は、心のざわつきを落ち着かせ、穏やかな気持ちを取り戻す助けとなります。
今回ご紹介するのは、手軽に始められるアナログな趣味、「ペン字」です。美しい文字を書くことに憧れがある方も、しばらくペンを握っていないという方も、きっと楽しんでいただける時間となるでしょう。
なぜ今、ペン字を始めるのが良いのか
ペン字とは、硬筆、つまりペンを使って文字を美しく書く練習のことです。鉛筆、ボールペン、万年筆など、普段使い慣れた筆記具で始められるのが大きな魅力です。
ペン字に取り組む時間は、自分自身と静かに向き合う貴重なひとときとなります。文字の一画一画に集中することで、余計な考え事が頭から離れ、心が落ち着いていくのを感じられるでしょう。これは、デジタルデバイスから離れ、五感を使って行うアナログな活動ならではのリフレッシュ効果です。
また、文字が少しずつ上達していく過程も、大きな喜びとなります。手書きの文字には、書いた人の心が表れると言われます。丁寧に書かれた文字は、受け取る人にも温かい気持ちを伝えます。家族や友人へのメッセージ、手紙、あるいは自分だけの日記など、手書きの機会は意外とたくさんあります。美しい字で書かれた文字は、きっと相手にも喜ばれるはずです。
ペン字を始めるために必要なもの
ペン字を始めるのに、特別なものは必要ありません。今お持ちの筆記具と紙があれば、すぐにでも始められます。
- 筆記具: 一般的なボールペンや鉛筆で十分です。慣れてきたら、書き心地の良いゲルインクボールペンや、万年筆を試してみるのも良いでしょう。万年筆で書く時のインクの濃淡や、紙の上を滑る感覚は格別なものです。
- 紙: ノートや便箋、コピー用紙など、書きやすいもので構いません。市販されているペン字練習帳を利用すると、マス目や手本がついていて便利です。線が薄く印刷されているものを選ぶと、手本を見ながら上書きして練習できます。
- 手本: きれいな字で書かれた手本があると、どのように書けば良いかの参考になります。ペン字練習帳に載っている手本を利用するか、お好きな書家や手書き文字を参考にしても良いでしょう。最近は、インターネット上でも手本を見つけることができます。
これだけ揃えれば、もうペン字の世界へ一歩踏み出せます。高価な道具を揃える必要はありませんから、気軽に始められます。
基本的なペン字の始め方と練習のステップ
ペン字の練習は、難しく考える必要はありません。まずは基本からゆっくりと始めてみましょう。
- 正しい姿勢とペンの持ち方: まず、書く時の姿勢を正します。背筋を伸ばし、机と体の間に適度な空間を空けましょう。ペンはリラックスして持ち、指先に力を入れすぎないことが大切です。力を入れすぎると、すぐに疲れてしまいます。
- 線の練習: 最初は、直線や曲線を繰り返し練習します。縦線、横線、斜め線、丸など、基本的な線を安定して書けるようになることが、美しい文字への第一歩です。手本を見ながら、線の長さや方向、止め・はね・払いを意識して丁寧に書きます。
- ひらがな、カタカナの練習: 次に、ひらがな、カタカナの練習に移ります。私たちの文章の基本となるひらがなは、形やバランスがとても大切です。手本をよく見て、一画ずつゆっくりと書いてみましょう。文字全体のバランスや、隣り合う文字との繋がりも意識します。
- 漢字の練習: 漢字は部首やへん、つくりのバランスが重要です。まずは簡単な漢字から始め、徐々に難しい漢字に挑戦していきます。中心を意識したり、各パーツの大きさを調整したりすることで、整った字になります。
- 単語や文章の練習: 一文字ずつ練習するだけでなく、単語や短い文章を書いてみます。文字と文字の間隔や、行全体のバランスを意識することで、より自然で美しい文章が書けるようになります。好きな歌の歌詞や、心に残る言葉などを書き写してみるのも楽しい練習方法です。
一度にたくさん書こうとせず、毎日ほんの数分でも良いので、時間を決めて取り組むのが継続のコツです。机に向かうのが難しければ、リビングのテーブルで、あるいは少し時間のできた合間に、ノートを開いてみるのも良いでしょう。
練習を続けるコツと広がる楽しみ
ペン字は、すぐに劇的な変化があるわけではありません。だからこそ、焦らず、楽しみながら続けることが大切です。
- 無理のない目標設定: 「毎日1ページ書く」「1週間でひらがなをマスターする」のように、自分に合った小さな目標を立てると続けやすくなります。
- 変化を楽しむ: 練習を始めた頃の字と比べてみましょう。少しずつでも変化があれば、それがモチベーションになります。練習ノートを振り返るのもおすすめです。
- 書く機会を作る: 年賀状や暑中見舞い、お礼状など、手書きでメッセージを送る機会を活用してみましょう。書いた文字が誰かに喜ばれることは、大きな励みになります。
- 関連書籍や教室も活用: さらに深く学びたいと思ったら、書店には様々なペン字の教則本がありますし、地域の公民館などでペン字教室が開かれていることもあります。通信講座で学んだり、同じようにペン字を楽しむ仲間と交流したりする機会もあるかもしれません。自宅でマイペースに練習するのも良いですし、時には人から教わったり、他の人の文字を見たりするのも刺激になります。
まとめ
スマートフォンやデジタル機器が生活の中心になりがちな今だからこそ、ペン字のように自分の手先を使い、集中して行うアナログな活動は、私たちに心の平穏とリフレッシュをもたらしてくれます。
必要なものはペンと紙、そして「書いてみようかな」という少しの気持ちだけです。静かな時間を作り、文字と向き合うひとときを持つことから始めてみませんか。きっと、日常の中に心豊かな「手間ひま時間」が生まれるはずです。書くことを通して、自分自身と、そして手書きの温かさが見直されている人との繋がりを感じられるでしょう。